私たちは、日本のTV番組で、映像とともに放送される内容については、無条件に真実であると思い込み勝ちです。自分がその報道の中身に疎いときには、特にそうです。
1~2年前に、あるTV番組で「いま中国では建設の途中で工事が止まっているマンションが、あちらにもこちらにもあります、ついに不動産バブル崩壊の兆しが見えてきました」というような内容のものを放送していました。
しかし、この報道は誤りです。
このように建物は完成したけど入居者がいないマンションは、その時に始まったことではありません。私は、広東省の広州に何度も行っていますが、そのようなマンションは10年も前からたくさん見ています。2桁の経済成長率を続けていたころもそうでした。
中国での不動産売買の仕組みを知らないので、このような誤った報道になってしまうのです。
中国でのマンションは、部屋の形をしたコンクリートむき出しの箱だけで販売し、そのマンションを購入した人が部屋の内装工事をやることになっています。
ですから、工事が止まっているわけではなく、工事としては完了しているのです。内装工事が進まないのは、それを購入した人が投資で購入しているからです。もともと住む予定がありません。
都市部でのマンション需要はまだまだ旺盛で、いまも価格が上昇しているようです。
ちなみに、中国では都市部の場合、土地所有権は国家に帰属し、土地使用権が個人に帰属します。
具体的には、国家がすべての土地を所有し、地方政府がその土地を管理するとともに、マンション開発業者に土地使用権を売却し、マンション開発業者はマンション建設後に、個人に販売するという流れです。土地使用権の期間は、居住用地は70年、工業用地は50年、商業用地は40年と決められています。
先ほどの報道の誤りは、たまたま取材班が現地に行ったところ、人が住む気配もなく、内装工事もしていないマンションをいくつか見たため、すわ、不動産バブルがはじけたと思ったのかもしれません。
その背景には、中国経済はいつか破綻すると考え、いつその時がやってくるのか、今か今かと期待して待ち構えている人が多いことがあると思います。日本の常識で中国を見て、早合点してはいけません。
2017.05.24