9月11日の神奈川新聞に、日本の生態系を壊す「外来種」を食べながら、この問題について考えようというコンセプトで横須賀にオープンした居酒屋が紹介されていました。
その居酒屋を経営しているのは、ふだんは三浦半島で田んぼを保全する活動をしているNPO法人で、8月中旬から10月17日までの2か月の期間限定の営業で、営業時間も火・木・日曜日の午後6~11時です。2か月間だけの営業ですので店名は「ふたTSUKI」です。
料理は、北米原産の「アメリカザリガニ」の身をバジルソースで炒めた「ジェノバ風」とか、コイの切り身を使ったピリ辛の「麻婆鯉」などで、食べやすくするために、濃いめの味つけで臭みを消したり、ソースに絡めたり、いろいろ工夫しているようです。お客さんの評判は「思ったよりも美味しい」といったところです。
ところで「外来種は強くて日本の在来種は弱い」というイメージがありますが、本当にその通りなのでしょうか?
まず「外来種は強い」という命題について考えてみます。
外来種には動物も植物もありますが、たとえば、ふだん私たちが食べている野菜はほとんどが「外来種」です。トマトは南米アンデス山脈が原産、ナスはインドが原産と言われています。
しかし、トマトやナスが他の植物を駆逐して困るという話は聞かないので、一概に「外来種が強い」とは言えないと思います。
たぶん、強いと思われている「外来種」の前に「天敵」が現れていないだけなのです。「天敵」がいないので爆発的に増えて問題になっているのだと思います。
ですから、日本古来の生物の中から「外来種」の「天敵」を探し出し、「外来種」と同居させるのも、日本の生態系のバランスを取り戻すひとつのやり方かもしれません。
次に「日本の在来種は弱い」という命題については、「コイ」・「タヌキ」・「カブトムシ」のような日本の在来種が、海外武者修行で現地の在来種と闘って勝っているケースもあることから、これも一概に正しいとは言えません。
特に「錦鯉」は、雑食で、成長すると「天敵」がほとんどいなくなってしまうので北米で嫌われているようですが、日本は北米産の「アメリカザリガニ」で困り、北米は日本産の「錦鯉」で困っているのですから「お互い様」です。
以上をまとめると、
①もともと日本の生態系は、食う・食われるという「食物連鎖」でつながっていて個体数の調整ができていたため、バランスがとれていました、
②そこに「外来種」が入ってきましたが、なかなか「天敵」が現れず、個体数が増えてしまったため「外来種は強い」というイメージが定着しました、
③日本の「在来種」には、もともと「天敵」がいて個体数の調整ができていましたが、そこに「外来種」が登場し数で圧倒したため「在来種は弱い」というイメージが定着しました、
④しかし、日本の「在来種」の中には、海外武者修行で現地の在来種を圧倒しているものもあります、
⑤結局「外来種の問題の原因は天敵の不在」ではないかと思われます、
ということになります。
「外来種」は、人間の世界で言えば、たとえば、アメリカ人が日本の片田舎に移り住み、その村落に溶け込めず、交流がないまま、どんどん友だちを増やしていっている状態と似ています。
「外来種」には「天敵」がいないため「食物連鎖」で成り立っている生態系の不安定要素になっているのだと思います。
もし、私が若い生物学の研究者だったら、外来種をやみくもに駆除するのではなく、外来種の天敵を探し出し、食物連鎖でつながっている生態系に組み込んで個体数のバランスを再構築することに執念を燃やしていたかもしれません。
2017.09.15