昨年3月の米中首脳会談で、当時のオバマ大統領と中国の習近平主席との間で、中国による北朝鮮攻撃について合意されたと言われています。
しかし、いまの状況で中国が北朝鮮に先制攻撃を加えることは考えにくいと思います。
中朝間には、1961年に締結された「中朝友好協力相互援助条約」があります。この条約の第2条には「締約国の一方が武力攻撃を受け、戦争状態に陥った場合、他の締約国は直ちに軍事その他の援助をする」と明記されています。
これは、現実的には、北朝鮮がアメリカからの攻撃を受けた場合、文字通りの解釈をすれば、中国は自動的に参戦することになります。
これでは、中国は北朝鮮を攻撃できないばかりか、アメリカが北朝鮮を攻撃したときには、中国も参戦し、アメリカと戦って北朝鮮の救世主にならなければいけないということになります。
この「自動介入条項」は、中国にとって足かせのひとつになっていますので、現在、中国に都合のよい条文解釈をしようとする動きがあります。
中国にとって、北朝鮮がこのままの状態でずっと生きながらえてくれるのがベストなのですが、アメリカでは、穏健なオバマ政権から過激なトランプ政権に変わり、北朝鮮に対して影響力のある中国の役割が強く求められています。
そこで、しぶしぶ、北朝鮮の外貨獲得源になっている北朝鮮からの石炭、銅、ニッケルの輸入制限をしたり、最近では中国から北朝鮮への観光ツアーを中止したり、小出しに北朝鮮経済制裁を進めているところです。しかし、経済制裁として最も効果のある、もしこれをやったら北朝鮮の息の根を止めてしまうという、最後の切り札の原油供給停止には踏み切っていません。
つまり、中国は、北朝鮮との血で結ばれた同盟のもとで、国際社会の目を気にしながら、北朝鮮を生かさず殺さずという経済制裁を続けているところです。
このような状況ですので、現在、中国が中朝国境沿いの鴨緑江、豆満江に人民解放軍の精鋭部隊を集結させているのは、北朝鮮を攻撃するためのものではなく、いまの段階では、北朝鮮崩壊後に中国に流れてくる難民を保護するための対応と考えられます。
以上のように、中国が自らの意思で北朝鮮を倒すことは考えにくいと思います。
2017.04.18