私は、時々、東京都内の寿司屋にひとりで入ることがあります。行きつけの店に入ることも、初めての店にふらっと入ることもあります。店に入ると、まずカウンターを見渡して、寿司職人と話がしやすい位置に陣取ります。
初めての店の場合、注文以外のことで寿司職人から話しかけられることは滅多にないので、だいたいは私から話を切り出します。寿司屋で当たり障りのない話といえば、寿司ネタの産地でしょうか。
Q:このエビはどこの? → A:愛知です、
Q:このシャコはどこの? → A:伊勢湾です、
Q:このサヨリはどこの? → A:千葉です、
といった風にやり取りを始め、たとえば、木札を眺めながら、
Q:サザエはどこの? → A:千葉です。
そして、サザエのつぼ焼きを注文し、焼きあがった貝の突起がとんがっていれば「波が穏やかな場所で育ったんでしょうね?」とか、突起が丸っこければ「波にもまれてゴロゴロ転がっていたんでしょうね?」と寿司職人に話しかけながら、「このサザエはオスですか? メスですか?」と尋ねると、「それはわかりません」と答えます。
このあたりまで来ると、寿司職人の方からいろんなことを話し始めます。自分とはまったく異なる人生を歩んできた人たちの話を聞くのは楽しいものです。
ところで、先ほどのサザエのオス、メスは、外観からは判断できません。いちばん奥の渦巻き状の「わた」が白であればオス、緑であればメスです。
2017.04.26