中国では、お手軽で安っぽい、ただのコピーは「盗版」、手の込んだコピーは「山寨(さんさい、シャンジァイ)」と使い分けられています。
外国から見れば、どちらも同じ「ニセモノ」なのですが、中国人にとって「山寨」の方にはプライドがあるようで、中国のひとつの文化にまでなった「パクリ文化」のことを「山寨文化」と呼んでいます。
10年ほど前、中国で「ホンダCR-V」のコピー車が走り回っていました。そのコピー車とは、中国・双環自動車の「来宝SRV」で「ホンダCR-V」よりも日本円で100万円以上安く売られていました。
私は、何度か、広東省・広州市で、隣の車線を「ホンダCR-V」と「来宝SRV」が前後して走っている場面に遭遇したことがありましたが、どこが違うのかさっぱりわからず、かなり難易度の高い「間違い探し」の問題のようでした。
当然ホンダは「外観が酷似している」として意匠権侵害で双環自動車を提訴しましたが、双環は「たまたま似ているが独自デザインだ」としてホンダを逆提訴しました。
そして、何年にもわたる係争の結果、昨年2016年4月、日本の最高裁に相当する最高人民法院が、ホンダに対して1,600万元(約2億7,000万円)の賠償金を支払うことを命じました。
この判決結果に中国のネットユーザーがあきれ返り、中国版ツイッター・微博(ウェイボー)で炎上し、
・誰が見てもパクリなのに、なんて恥知らずな!
・中国に知的財産権を語る資格はない!
・最高人民法院は外国のものを盗むのは盗みとは言わないのだ!
・祖国が「ならず者」なのを見て恥ずかしい!
・相手は日本企業だが、情けない!
・ホンダは有名だけど双環なんて聞いたことがないぞ!
などのコメントが寄せられました。
この係争事件から言えることは、
①外国企業が中国で知財権侵害で争っても勝てない、
②中国市場でパクられるのは諦め、欧米に輸出したときに欧米で戦って勝つしかない、
③中国のコピー問題は、2001年のWTO(世界貿易機関)加入後も変わっていない、
④中国の一般ネットユーザーは、この問題を正しく受け止めている、
⑤しかし、公の場で発言すれば中国当局に拘束されてしまうので言えない、
ということになります。
中国での裁判は、はっきり言うと、最初から中国側の勝訴が決まっていて、後は賠償金をいくらにするかだけの問題だと思います。
しかし、中国も、いまや世界の経済大国です。いつまでも「犯罪を犯した身内をかばう」ようなことを続けていてはいけません。中国以外の外国並みに、公正で、裁判官の良心に忠実な判断をするようにならなければいけないのです。
また、このように「外国製品のコピーを保護する」国家としての姿勢が、中国人ノーベル賞受賞者が人口のわりに極端に少ないことの遠因になっているのだと思います。
中国は、自動車、バイク、電化製品、ファッションブランドなどの偽ブランド、コピー商品で溢れかえっています。
紛らわしい商標もたくさんあります。
HONDAとそっくりの「HONGDA」、SHARPとそっくりの「SHARK」、SONYとそっくりの「SQNY」、どう発音するの? などなど。
そして、中国でのコピー問題で、特に悪質なのは、外国の人気商品の偽ブランドを先に中国で商標登録してしまい、その結果、本物の商品を中国で販売しようとしたときに、本物の方がコピー商品と見なされ、販売禁止になることです。
以上のように、中国ではコピー商品がたくさんあるのですが、面白いことに、現地で中国人と話していると、どれが本物でどれが偽物なのか、その違いをよくわかっていて、コピー商品も購入の際の選択肢のひとつとして「パクリ文化」をごく自然に受け入れていることです。
2017.09.22