安くて美味しい寿司ネタの代表格のひとつが「タコ」、食感がよく、噛むとじゅわっと旨みがにじみ出てくるのがたまりません。
「タコ」には「マダコ」と「ミズダコ」とがあり、茹でてから握ることが多いのですが、私は断然「ミズダコ」の「生」が好きです。
「タコの刺身」は寿司職人の力量が問われるネタと言われています。茹でてから握る場合には、塩でもんで「ぬめり」を取りますから問題ありませんが、刺身の場合は塩もみをしないので「ぬめり」があって切りにくいからです。ですから、まずは、よく切れる包丁を使わないといけません。
タコには8本の「足」があります。これは学術的には「足」ではなく「腕」で、英語でも「arm=腕」です。日本人には「足」に見えますが、英米人には「腕」に見えるのかもしれません。
また「頭」のように見えるいちばん上の大きな丸い部分は、実際には「胴」で、じゃ「頭」はどこにあるのかというと、「足」の根元の、「眼」や「口」が集まっているところにあります。
このように「頭」から「足」が生えていますので「頭足類」と呼ばれています。
「タコ」は知能が高いことでも知られ、たとえば、蓋つきのガラスの瓶に餌を入れたものを「タコ」に見せると、瓶の蓋をねじって開け、瓶の中の餌をとることができると言われています。
また、敵に襲われたときには「トカゲのしっぽ切り」のように、捕まえられた「腕」を切り離すことができます。
その後「腕」が再生するのですが、切り口の状況次第で、そこから2本生えることがあり、その結果8本以上になることもあります。過去最多の本数は96本です。敵に何度も何度も襲われたのかもしれません。その標本は、三重県のマンボウの泳ぐ水族館「志摩マリンランド」にあります。写真を見ると、植物の「ひげ根」とそっくりです。
「ミズダコ」は「タコ」の種類の中でもいちばん大きな「タコ」で、「腕」を広げると3~4mにもなり、体重も20~30kgぐらいあります。そして、過去最大のものは、体長約9m、体重 約270kgだそうです。
「タコ」のメスは生涯に1回だけ産卵します。
「マダコ」は1か月ぐらいで孵化するのですが、「ミズダコ」は孵化するまでに10か月もかかります。
この時の「お母さんダコ」の行動は感動的です。
10か月の間、巣穴から離れず、何も食べずに、肝臓に蓄えられた栄養分を消費しながら卵を守り続けます。
そして、子育てが終わり、卵が孵化するころには肝臓の重さが5分の1ぐらいにまで減って、栄養分を使い果たして「お母さんダコ」の寿命がつき、生涯を終えるのです。
このように涙ぐましい習性を持った「ミズダコ」ですが、食物連鎖はこの世の習い、「ミズダコ」も人に美味しく食べられてこそ、その存在価値が高まるというもの、・・・ などと勝手なことを考えながら、「ミズダコ」の味を楽しんでいます。
2017.09.10