習近平が巨大経済圏構想「一帯一路」と国際金融機関「アジアインフラ投資銀行=AIIB」構想を提起したとき、中国で在庫の山となった鉄鋼・セメントなどの建設資材をさばこうとしているなとピンときましたが、それ以上のことまでは考えていませんでした。
しかし、どうも胡散臭く、その魂胆をよくよく考えてみると、これは、いくつかの問題を一気に解決する妙案だということに気がつきました。
本当によく考えたもんだなぁと感心します。
まず、「一帯一路」構想のアウトラインを確認します。
「一帯」とは中国と中央アジア、ヨーロッパを結ぶ「陸のシルクロード」、「一路」とは、インドネシアからインド洋沿岸諸国を経てアフリカを結ぶ「海のシルクロード」で、その目的は、鉄道・道路・港湾などのインフラ整備を通じての地域統合です。
つまり、中国を中心としてユーラシア大陸、アフリカ大陸に広がる「中華共栄圏」を建設する構想になります。
次に、「アジアインフラ投資銀行=AIIB」は、中国が主導する国際金融機関です。
現状、中国にはお金があり余っていて、都市部の人口問題、住宅問題、失業問題、鉄鋼・セメントなどの不良在庫問題を抱えています。
この前提で、お金のない東南アジアのどこかの国が、鉄道・道路・港湾などのインフラ整備を進めたいときに、中国が、この「一帯一路」と「AIIB」とをセットで進めるとしたら、どんなことになるのでしょうか?
①中国はその国に融資します(余剰資金の投資)
②インフラ建設のために、中国国内に積みあがっている不良在庫を輸出します(不良在庫の処理)
③インフラ建設支援要員として失業者を派遣します(人口・住宅・失業問題の解消)
④鉄道・道路・港湾などが完成した後に、受益者負担で回収できるのはごくわずかで、大部分はその国の財政負担となりますので返済が滞ります。中国は、その担保として、戦略的に重要な港湾施設などを抑え、中国の支配下に置きます(軍事拠点化)
⑤中国は債権者ですので、その国の政治の中枢にまで入り込むようになります(政治的支配)
⑥経済も中国人中心に回すようになります(経済的支配)
⑦中国人居住者が増加します(実質的領土の拡大)
⑧合同軍事演習もすることになります(軍事的支配)
⑨いっそのこと中国と一緒にならないか? と声をかけ、中国〇〇自治区として編入します(中国同化)
⑩アジアからアフリカにまたがる「中華共栄圏」と軍事拠点化が完成し、アメリカと世界を2分割する巨大勢力となります(世界2分割)
このように、現在、中国が抱えている国内の経済・社会問題を外国に転嫁し、同時に、軍事的・経済的に支配地域を拡大して巨大軍事・経済圏を完成させるのが最終的な中国の狙いだと思います。
習近平は「共存共栄」と言っていますが、それは「中国の支配下」での「共存共栄」です。
そのように考えれば、現在、中国が国際的な批判を浴びている南シナ海や東シナ海での軍事行動は、上記最終目標に向けた地ならしとしての位置づけとなります。
今後、中国のように野望があり、お金を持ってしまった国は、軍事力を背景に、周辺諸国を経済的に征服し、植民地化して支配下に組み込んでいくような「世界戦略」を持ち、それに向けた動きが活発になっていくのだと思います。
ということで「一帯一路」+「AIIB」は、中国にとっては、まさに「一石十鳥」の妙案でした。
中国の「世界戦略」を聞いて、まさかと思うかもしれませんが、数年前、米国のキーティング太平洋軍司令官が中国軍の幹部と会談した際に「ハワイから東を米国、西を中国で管理しないか」という「太平洋2分割支配」を提案されたという有名な話があります。中国は本気なのだと思います。
2017.09.08