中国が新学期の9月から「愛国教育」を強化しました。
中国共産党の教育方針を徹底させるために、中国教育省が「歴史」、「国語」、「道徳・法治」の3科目の「国定教科書」を編纂し、全国の小中学校は、今月からその教科書を使って授業をすることになります。
子どものうちから「中国という国家」と「中国共産党」と「社会主義」を愛する感情を植えつけることに主眼が置かれ、その3科目に共通していることは「中国共産党が中国で果たしてきた功績を称賛する」というものです。
その内容が事実にもとづくものであれば、それはそれでよいのですが、問題なのは、歴史の「国定教科書」で、チベット、新疆、台湾、尖閣諸島、南シナ海は「分割することのできない我が国の領土」と教えられることです。
かつて、チベットは「吐蕃」と呼ばれ、新疆ウイグルはトルコ人の土地を意味する「トルキスタン」と呼ばれていましたが、いずれも中国に征服され、今は「チベット自治区」、「新疆ウイグル自治区」になっています。
チベット人は「チベット語」を話して「チベット仏教」を信仰し、ウイグル人は「ウイグル語」を話して「イスラム教」を信仰しています。
それぞれには固有の文化と独自のアイデンティティが形成されていますので、いつまで経っても中国の同化政策が進まず、中国語を話さない人も多く、中国の植民地のままです。
そのため、チベット人やウイグル人による独立運動が絶えず、それに伴い、中国軍による武力弾圧、大量虐殺、人権侵害が発生しています。
中国にとっては国内問題なのですが、虐殺や人権侵害が起こっているため国際問題化しています。
そして、台湾。台湾も中国の領土だと教えられます。
そして、尖閣諸島。日本政府が不当に占拠しているため奪い返さないといけないと、子どもたちを教育することになります。
そして、南シナ海。国際司法裁判所の判決で中国の「敗訴」が確定しているのですが、「九段線」の正当性を教え、南シナ海からベトナム、フィリピンを排除しなければいけないと子どもたちを教育し、子どもたちの国家意識を高めることになります。
これらの国際問題は、客観的な事実にもとづけば中国にとって不利なことばかりなのですが、ありのままに教えるのでは「国定教科書」としての意味をなしません。中国政府にとって都合のいいことだけを記載し、都合の悪いことには一切触れずに編纂されているはずです。
小学校や中学校のころから「洗脳教育」をする効果は絶大です。このような教育を受けてしまうと、大人になってからもなかなか修正が利きません。
当然「反日教育」も加速すると思います。
「国定教科書」で子どものころから洗脳するという方針は、わずか6%の中国共産党が残りの94%の国民を支配する一党独裁国家の宿命かもしれません。
小学校や中学校で中国共産党の方針にもとづく思想教育を受け、党に対する忠誠心を植えつけられ、ありのままの事実を学ぶ機会が奪われている中国の子どもたちは、やはり、気の毒であり可哀想だと思わざるを得ません。
2017.09.07