日本人にとっての「自尊心」、アメリカ人にとっての「プライド」、中国人にとっての「面子」は、似たようなものではありますが、その中でも、中国人にとっての「面子」は特別のもので、命の次に大切なものとされています。
中国人は人前で恥をかかされることを極端に嫌います。
それは想像を絶するほどで、いったん「面子」をつぶされると人間関係が修復不能な状態に陥ることが往々にしてあるようです。
そういったことから、中国社会では、自分の「面子」を保ちながら相手の「面子」に対しても気を配ることによって、良い人間関係を維持しようという意識が働いています。
今年4月に習近平が訪米したときも、中国政府は「面子」工作をしました。
今回の訪米は、フィンランド訪問の帰路に、ついでにアメリカにも立ち寄っただけで、トランプ米大統領に会うためにわざわざ中国から出向いていったわけではないという形にしたのです。
これは、大国意識が強まっている中国国内世論を意識した工作で、米国と対等な関係にあることを印象づけないと習近平の「面子」がつぶれるからです。
そして、米中会談後、中国メディアは、米フロリダ州パームビーチにある別荘「マール・ア・ラーゴ」を詳細に紹介し、米大統領の別荘外交は特別なもので、習近平はトランプ米大統領から手厚くもてなされたと大々的に報じました。
しかし、習近平が別荘に招かれた4月よりも2か月前の今年2月に、安倍首相が外国首脳として初めて「マール・ア・ラーゴ」に招かれたことについては一切報じられませんでした。
これも習近平の「面子」を保つためです。
2013年6月、習近平政権発足後、初の訪米の際も同様で、中南米3か国を公式訪問した後で、ついでに当時のオバマ米大統領と会談したことになっています。
ところで、今月上旬、第3次安倍内閣発足後3回目の内閣改造で外務大臣になった
河野外相は、頭を下げながら握手をする癖があるようです。
2~3回、TVでそのような映像を見たことがありますので、たぶん、癖なのでしょう。これは良くありません。相手の目を見ながら握手しなければいけません。
外相就任直後の、フィリピンでのASEAN関連外相会議の後で、中国・王毅外相と会談した時にも、またこれをやってしまいました。
中国共産党中央委員会の機関紙「環球時報」は河野外相が頭を下げて王毅外相と握手している写真を1面に掲載しました。
中国は日本よりも格上だと印象づけるための策略で、中国メディアは常にその瞬間を狙っています。
そもそも「面子」とは、そのように相手を必要以上に下であると印象づけることによって保たれるような低次元のものではなかったはずです。
中国古来の「面子」は、お互いの「面子」を尊重することによって、良好な人間関係を維持する規範のようなもので、もっと崇高な文化のひとつだったと思います。
しかし、最近の中国の振る舞いを見ていると、排他的で、国際的なバランス感覚のなさが目立ちます。
「井の中の蛙」のような、数十年前のムラ社会の悪い側面ばかりを継承したまま、そして、国際的なバランス感覚を身に着けないまま、あっという間に経済・軍事大国になってしまった感があります。
そのような今の中国がやっていることからは、底の浅い「虚栄心」しか見えてこないのです。
2017.08.28