秋と言えばサンマ。
1995年ごろまではサンマは日本でしか食べられていませんでした。
そのため、サンマ漁をしていたのは日本だけで、漁獲量も25万トン前後を維持していました。
ところが、2000年ごろから台湾が参入し、2013年ごろから中国も参入して、北太平洋で中国・台湾漁船が急増して乱獲が始まりました。
それに伴い 日本のサンマの漁獲量が減り、ここ2年間は例年の半分以下の11万トン台になっています。
このままのペースでサンマの乱獲が続けば、近い将来、危機的な状況に陥ることは目に見えています。
なぜこのような状況になったのかと言うと、サンマには回遊ルートがあるからです。
サンマは、公海上で反時計回りに廻りながら成長し、7月ごろに北海道沖で日本の排他的経済水域(EEZ)に入り、その後、8月は北海道沖、9月は三陸沖、10月は福島沖、11月は房総沖を回遊するのですが、日本のEEZに入る直前の公海上の漁場で、サンマ漁後発組の中国・台湾漁船が獲りつくしてしまうからです。
そのため、従来から日本近海で漁をしてきた日本の漁師の漁獲量が急減しています。
そこで、先週末に札幌で開催された国際会議「北太平洋漁業委員会」で、日本政府はサンマの漁獲規制の必要性を訴え、国ごとの漁獲枠を提案しました。
その漁獲枠は、全体の漁獲枠を年間 約56万トンに設定したうえで、過去5~10年間の国ごとの漁獲実績にもとづき、日本は 約24万トン、台湾は 約19万トン、中国は 約5万トン、韓国は 約2万トンに設定しました。
しかし、中国も参加する国際会議での協調の難しさが浮き彫りとなり、合意には至りませんでした。
日本の提案に対しアメリカ・台湾は理解を示し賛成しましたが、中国は、日本の提案に聞く耳を持たず「規制は不要」と主張して一切妥協せず、韓国・ロシアがそれに同調したため、漁獲枠の議論に入れないまま閉幕となりました。
親日国のアメリカ・台湾が賛成、反日国の中国・韓国・ロシアが反対と、くっきり分かれました。
この結果は、ちょっと考えれば、事前に予想できていたことです。会議前に漁獲枠の案を見た時にまとまるわけがないと思っていました。あまりにも中国を知らなすぎます。
考えるポイントとしては2つあります。
①漁獲枠の国別割当方法:
過去5~10年の漁獲実績ベースだったため、日本枠は 2016年実績の約11万トンを上回る約24万トン、中国枠は 2016年実績の約6万トンを下回る約5万トンとなり、日本に有利で中国に不利でした。これを中国が受け入れるはずがありません。
②中国人の国民性:
中国人は「商売になるのかならないのか? 今どれだけ儲けられるのか?」という尺度でものごとを考えます。
中国では食用のほか、家畜用飼料としての需要が伸びているところですので、儲けられるうちは徹底して儲けようとします。
その結果サンマが絶滅したとしても知ったことではありません。
もともと、中国がサンマ漁を始めたのは 2013年ごろからのことで、まだサンマ漁を始めて4年しか経っていません。もしサンマを獲りつくし絶滅したとしても、4年前に戻るだけの話です。サンマ漁が商売にならないと思ったら、サンマ漁をやめて次の魚を乱獲するだけのことです。
今回の国際会議で、漁船の数を増やすことを禁止する措置については合意されました。
しかし、これも中国の場合、有名無実になることは火を見るよりも明らかです。無登録の中国漁船が増えるだけのことです。
違法操業で乱獲した漁獲量が国際機関に申告されることはありません。そのような乱獲が後を絶たない状況が、この合意によって解消するとは考えられません。
この状況は今後も続くでしょうし、それを中国政府が取り締まることもありません。困るのは日本だけですから。
築地のサンマは、以前は1匹150円が相場でしたが、最近は200~250円になっています。
現在、乱獲で資源が減っているのはサンマだけではありません。イワシ、サケ、スルメイカ、カツオ、スケトウダラ、マアジも激減しています。
水産庁は、2016年の北太平洋のサンマの資源量は178万トンと推定 しています。
中国が例によって大型漁船団を組み、178万トンのサンマを一網打尽にして獲り尽くしてしまうと、サンマは絶滅してこの世から消えてしまい、永久に私たちの食卓に並ぶことがなくなるということです。
北太平洋での中国漁船を野放しにしておくと、いま時点でまさかと思うようなことが、現実のものになってきます。
最近の動きを見ていると、日本政府単独で有効な手を打てるような気がしません。
※添付画像は、2017年7月16日 読売新聞に掲載された「サンマ漁獲量とサンマの回遊ルート」です。
2017.07.18