北朝鮮の金正恩とシリア大統領のアサドとはお互いに祝電を送り合う仲です。
今年の4月15日の故・金日成主席生誕105周年の時には、アサドは金正恩に「シリアと北朝鮮は列強の野望と闘っている、ともに頑張ろう」という祝電を送りました。
そして4月17日のシリア独立71周年の時には、金正恩はアサドに「シリアに対する米国の侵略行為を糾弾する、シリアは敵対勢力の侵略と挑戦を粉砕し、国の独立と安全を守っている」というシリアを賞賛する祝電を送りました。
北朝鮮とシリアとは友好関係にあります。
1966年に北朝鮮とシリアが外交を樹立し、その後、1973年、第4次中東戦争のときには、北朝鮮がシリアに、パイロット・戦車兵・ミサイル要員など約500人を派遣し軍事的に支援しました。
1990年代には、北朝鮮はシリアに化学兵器を売却し、化学兵器製造施設の設計・建設支援をしています。
以上のことは北朝鮮・シリア研究をしている専門家の間では常識になっていることです。
昨年2016年も、シリアは、数回にわたって北朝鮮の兵器代表団をシリアに招き入れました。ミサイル・化学兵器の技術移転、防空システム構築支援のためです。
また、シリアには北朝鮮銀行の「端川商業銀行」があり、その銀行は、北朝鮮がシリアで稼いだ武器輸出代金を北朝鮮に送金するために、レバノンやロシアなどを頻繁に訪問しています。資金洗浄(マネー・ロンダリング)のためです。つまり、お金の出所を隠蔽し、正当な手段で得たお金に見せかけるため、レバノンやロシアを間に噛ませる必要があるのです。
今年の4月にシリアのアサド政権がシリア国民に対してサリンと見られる猛毒の神経ガスで攻撃し、子ども31人を含む88人を殺害しました。
そして、その2日後、アサド政権が化学兵器を使用したことを理由に、米軍が巡航ミサイルでシリアの空軍基地を攻撃しました。ちょうど米フロリダでトランプ大統領と中国・習近平国家主席が首脳会談をしていた時の出来事でした。
国連でロシア代表はシリアの化学兵器の使用を否定しアメリカを非難しましたが、うつむき加減で視線が定まらず、目が泳いでいましたので、ひと目でこれはウソをついている人の顔だと思いました。化学兵器を使用した事実を知ったうえで、立場上、アメリカを非難しているのだと感じました。
上記のように、シリアが化学兵器を使用した背後で北朝鮮がかなりの役割を果たしたことは間違いないと言われています ので、ロシアの主張には説得力がありません。
ところで、北朝鮮では政権維持のためには当たり前のように人を殺害し、シリアでも殺人は日常茶飯事です。そして、北朝鮮を支えているのが中国で、シリアを支えているのがロシアです。
社会主義国の中国・ロシアも、なんのためらいもなく反対勢力を弾圧し、時には殺害します。
なぜかというと、社会主義政権というものは、国家そのものは社会主義思想にもとづく政治イデオロギーで成り立っているのですが、国民は心の中では自由を願い、被支配者階級であることを望んでいないからです。
ですから、政権維持のためには力で抑え込むしかありません。それで自国民を異常なまでに取り締まり、反政府勢力の芽を摘み、排除・殺害することも多くなるのです。それだけ社会主義国家の存続は難しく、不安定な政治の仕組みなのだと思います。
中国・北朝鮮がひとつのグループ、ロシア・シリアがもうひとつのグループを構成し、そして、中国・北朝鮮グループとロシア・シリアグループとが協力関係にあるという構図で捉えるとわかりやすいかもしれません。
2017.07.14