2017年3月末の日本の現金・預金は、昨年3月末比21兆円増の932兆円でした。賃金の伸びが鈍いので、個人は消費を控え貯蓄に回した結果です。
932兆円の内訳は、現金つまりタンス預金が81兆円、銀行預金が851兆円です。
日銀がマイナス金利政策をとっているため、銀行の普通預金金利は年0.001%で、100万円を1年間預けても利息は10円です。バカバカしいのでタンス預金が増えることになります。
経済学における概念で「経済主体」という用語があり、マクロ経済学では、通常、家計・企業・政府に分類します。
話を単純にするために、政府を脇に置き、企業と家計という2つに限定して考えてみます。
そうすると、経済のイロハは、個人消費が活発になると、企業業績が良くなるので賃金が増え、賃金が増えるので個人消費がますます活発になって良いサイクルに入り、逆に、個人消費が停滞すると、企業業績が低迷するので賃金が増えず、賃金が増えないので個人消費がますます停滞するという悪循環に陥るということになります。
しかし、現在の日本経済は、この経済理論に反した動きをしています。
企業業績は良いのに従業員の給料を増やさず内部留保金を貯め込み、残りは株主配当としてバラまいています。
企業は、内部留保金を貯め込むだけで、設備投資に回しません。家計は、給料が増えないため節約志向となり、貯蓄を増やします。お金が回らないものだから経済が停滞します。
当たり前の話です。
仮称アベノミクス景気は戦後3番目の長さになりましたが、好景気という実感がなく、パッとしない景気拡大を続けている原因は、企業の内部留保金貯め込み体質にあります。
日本経済の規模はアメリカ経済の規模の半分なのに、日本企業による内部留保金は300兆円を超え、アメリカの2倍です。貯め込みすぎです。
OECDエコノミック・アウトルックで 過去20年の世界各国の賃金推移をみると、アメリカは8割増、ヨーロッパが5割増なのに対し日本は1割減です。
以上から何が言えるかというと、日本の企業が横並びで、株主優遇、従業員冷遇、江戸時代の庄屋さんがコメを貯め込んだように内部留保金を貯め込んでいる間に、経済的に欧米に後れを取ってしまったということです。
2017.07.03