欠陥エアバッグのリコール問題で苦境に陥っているタカタが、民事再生法の適用を申請する方向で調整に入りました。
問題となっているエアバッグは、膨らんだときに異常破裂し、部品の一部が金属片となって飛び散ることがあり、世界で約100件発生し、米国では11人が死亡、日本でも7件発生し2人が負傷しています。
この異常破裂は、エアバッグを膨らませるガス発生装置「インフレーター」の火薬に湿気を取り除く乾燥剤を使っていなかったことが原因と言われています。
米国では、今年1月、タカタが、エアバッグの試験データを改ざんした刑事責任を認め、罰金・賠償金合わせて10億ドル(約1,100億円)を支払うことで米司法省と合意し和解が成立しました。
リコールの対象になっているエアバッグの総数は世界で1億個、リコール費用が1兆円規模にもなるというのに、なぜタカタが倒れないのかなぁと思っていたら、ホンダ、トヨタなどの自動車メーカーが肩代わりし、請求していませんでした。肩代わりの金額はホンダがいちばん多く、たぶん5,000億円ぐらいだと思います。
最終的には、リコールの原因を作ったタカタが負担することになっていますが、2017年3月期の連結決算の最終利益が795億円の赤字だったことを考えれば、いつまで経っても返済できるとは思えません。
そこで民事再生手続きをすることになり、債権カット、つまり借金の棒引きになります。借金を棒引きすれば自動車メーカーの債権はなくなります。
自動車メーカーは体力がありますからまだいいのですが、タカタにエアバッグやシートベルトを作るために必要な部品を納入している取引先はたまりません。
民事再生手続きに入ると、タカタの債務は裁判所の管理下に置かれますので、取引先への支払いが遅れがちになります。取引先の売上代金の回収が遅れ、資金繰りが悪化すると倒産するところが出てくるかもしれません。
このような取引先が国内で132社、さらに、それらの企業と取引のある企業が613社もあります。
タカタの自力再建は無理ですので、いずれ、中国企業「寧波均勝電子」傘下の米自動車部品メーカーの キー・セイフティー・システムズ(KSS)が出資してできる新会社がタカタの業務を引き継ぐことになり、中国企業の孫会社に組み込まれることになります。
タカタが、このエアバッグの異常破裂事故の報告を初めて受けたのが、いまから12年前も前の2005年5月だと言われています。
しかし、タカタは、製品に欠陥があることを知りながら、その後も同じやり方で生産を続けていました。もしそのときすぐに技術的に抜本的な対応を取っていれば、このように大きな問題にはならなかったはずです。
その時点で、いまこの問題を放置すると将来どのような事態になるのかを見通すことができないほどのボンクラだったわけです。タカタ創業家の経営責任は重いと思います。
2017.06.20