今シーズンはどうしようもなく弱い巨人ですが、その巨人を巡って読売新聞と朝日新聞との闘いが続いています。
ことの発端は、2012年3月、朝日新聞の朝刊1面トップに大見出しで掲載された読売巨人軍の選手契約金報道です。
この記事は、朝日の記者の理解不足のため、ある一定の成績を達成した場合にだけ年俸に加算される出来高払いを意味する「報酬加算金」を、無条件に支払われる「契約金」と取り違えたことが原因で書かれたものでした。
この問題に対し、巨人軍は朝日に対して記事の訂正を求めましたが、2012年7月、朝日の第三者機関・報道と人権委員会(人権委)は1ページを費やす異例の扱いで「記事はすべて真実」とする見解を公表し、朝日の報道内容を追認しました。
そこで、巨人軍は名誉棄損訴訟を起こし、朝日を提訴しました。
東京地裁では請求棄却になりましたが、2016年6月、東京高裁で朝日の記事を誤りと断定し、巨人軍に対する名誉棄損を認め、朝日に対し330万円の賠償命令が下り、同年11月、最高裁で朝日の敗訴が確定しました。
法廷での審理の過程で行われた証人尋問での、裁判長と朝日の記事のとりまとめ役とのやり取りにはあきれました。
裁判長からの質問に対し、朝日はしどろもどろで、まともな陳述ができず、朝日の記者の理解不足とずさんな取材に加え、取材自体やっていなかったという実態が次々と明らかになり「ごめんなさい、取材が甘かったです」と謝る始末でした。
最高裁で朝日新聞の敗訴が確定したのに伴い、巨人軍は、朝日の第三者機関・報道と人権委員会(人権委)に対し、朝日の記事は真実であると結論づけた人権委の「見解」記事の訂正・謝罪を求めましたが、それに対し人権委は「審理せず」と通知しました。
人権委は朝日新聞社内の第三者機関で現メンバーは、憲法学者の長谷部恭男・早大教授、宮川光治・元最高裁判事、今井義典・元NHK副会長の3人です。
ここで浮き彫りになってくる問題点がいくつかあります。
①朝日新聞記者の取材の欠如という、報道機関にとってあってはならない重大問題が、判決で明らかとなったにもかかわらず、その問題が検証されないままであること、
②朝日は、最高裁での敗訴が確定した後も、司法判断で朝日の報道内容が否定されたこと、賠償が命じられたことには触れず、記事の「根幹」部分は認められたという記事を掲載したこと、
③朝日新聞社内に設置され、事務局も朝日の社員が担当している第三者機関は、そもそも第三者ではあり得ないこと、
です。
朝日にとって都合のよい部分だけを「根幹」と呼び、都合の悪いことには一切触れないのは、真実をありのままに伝えるというジャーナリズム本来の趣旨に反することです。
この問題については、朝日の記者の理解不足、ずさんな取材に加え、取材の欠如こそ「根幹」であるはずです。
また、朝日の第三者機関・人権委はそもそも第三者ではありませんから、朝日の記事の援護射撃の局面では意見を述べ、都合の悪い局面ではだんまりを決め込むのだと思います。
これは朝日新聞の体質の問題だと思います。
2017.06.06