2010年9月「尖閣諸島漁船衝突事件」が発生したとき、私は出張で中国の日系企業にいました。
その事件から2か月ほど経ったころ、中国の不法操業漁船が、故意に、海上保安庁の巡視船に「体当たり」するまでの一部始終を撮影した映像が動画配信サイト・YouTubeに投稿され、中国国内でも閲覧することができました。
そのころ、その日系企業で働いていた中国人女性スタッフが私に、申し訳なさそうな表情で「私は中国人ですが、これは中国が悪いと思います」と話していました。
基本的に、中国の日系企業で働いている中国人は、このようにバランスのとれた考え方のできる人が多いと思います。
中国船による「体当たり」作戦は、その後も続き、南シナ海では、中国船がベトナム漁船に「体当たり」して沈没させたり、燃料や獲った魚を強奪する事件が、年間20~30件発生しています。
古代ギリシャや古代ローマの時代の海戦では「体当たり」が主流でしたが、なぜ、いま中国船が、これほどまでに「体当たり」を繰り返しているのでしょうか?
それは、中国政府や中国海軍が練りに練った作戦で、特に知恵を絞ったところは「武器を使わないやり方で相手を攻撃する」という点にあります。
武器を使っていないので「衝突事故」であるという主張が可能になります。
ミサイルを発射すれば戦争になりますが、「衝突事故」であれば戦争になりません。
中国の沿岸警備隊の役割を持つ中国海警が「体当たり」攻撃を想定した仕様の12,000トン級の巡視船を建造し、公然と「体当たりするぞ」と息巻いています。
ですから、当然「体当たり」は「衝突事故」ではなく、中国が意図してやっていることですが、この「体当たり」仕様の中国海警の巡視船にぶつけられると、日本の8,000トン級のイージス艦はひとたまりもありません。
このように、中国船による「体当たり」は、武器を使わずに相手を攻撃して破壊するので戦争を回避することができ、かつ、どこまでも「偶然の事故」であると言い張ることのできる、中国にとって都合のいい攻撃方法だというわけです。
※添付画像は、2017年8月17日 読売新聞に掲載された「ベトナム漁船に体当たりする中国公船」です。
2017.08.30
