日本の諺は、逆もまた真なりと、どっちに転んでもよいようになっていると思います。
「二度あることは三度ある」。
失敗を重ねないようにしなさいという戒めです。
その反対は「三度目の正直」。
1回目、2回目はダメでも、3回目ぐらいにはうまくいくだろうという願望です。確率で考えてみても、発生確率が2分の1であれば、3回続けてダメな確率は2分の1の3乗ですから8分の1で、たぶん3回目ぐらいまでにはうまくいきそうです。
次に「蒔かぬ種は生えぬ」。
これは努力もせずによい結果を期待しちゃいけないという戒めです。
これの反対は「果報は寝て待て」でしょうか?
しかし、これは怠けていてもよいという意味ではなく、人事を尽くしたうえで気長によい結果を待ちなさいという意味ですから、言っていることは「蒔かぬ種は生えぬ」とあまり変わりません。
むしろ「鴨が葱を背負って来る」の方が「蒔かぬ種は生えぬ」の反対の意味をもつ諺として相応しそうです。
鴨が葱を背負ってきてくれれば、すぐに鴨鍋ができますので好都合です。
この諺は都合のよいことが重なるという意味で、事前の努力が前提になっていないからです。
次に「火の無い所に煙は立たぬ」。
根拠がなければ噂は立たないでしょうという意味で、芸能人のスキャンダルのようなものです。
これの反対が「根がなくとも花は咲く」。
根拠がなくても噂が飛び交うという意味で、芸能人のスキャンダルが、実は人騒がせなガセネタだった場合に使います。
ところで、今月上旬、築地場外市場で火のないところに煙が立ちました。
築地場外市場には海産物販売店や飲食店など約400軒が密集していますが、その中にある人気の立ち食いラーメン店「井上」から出火しました。
火のないところから煙が立ったのです。
午後1時半に閉店した後、従業員が壁際のコンロで数時間、ずんどう鍋を火にかけ、午後4時ごろにガスの元栓を閉めて帰ったのですが、その50分後の午後4時50分ごろに出火しました。
ガスコンロの熱がステンレス板を通じて壁に伝わる「伝導過熱」が原因でした。
このように火が直接の原因ではなく、蓄積された熱で、その近くにある可燃物が発火する現象が「伝導過熱」で、東京都内では飲食店を中心に年間20件前後も発生しているそうです。火は怖いですね。
「火のないところに煙が立った」事例です。
2017.08.16