今年になってから中国は、日本海周辺海域での軍事訓練を実施するなど軍事活動を活発化させていましたが、今度は、中国軍の情報収集艦、中国海警局の公船が相次いで日本の領海に侵入してきました。
7月2日に1回、15日に2回、17日に1回、と7月だけで延べ4回です。
しかし、日本政府はいまのところ中国に対して抗議をしていません。
それは、国連海洋法条約で、安全上の脅威がなければ他国の領海を自由に通航できる「無害通航権」が認められていて、この4回の領海侵入が無害通航でないという確かな証拠がないからです。
誤って日本の領海に迷い込むはずはないので、中国が意図的に領海侵入を繰り返していることは間違いありません。
では、その意図とは何でしょうか?
私は中国には2つの意図があると思います。
ひとつ目の意図は、5月下旬に米軍が実施した「航行の自由作戦」に対する報復です。
南シナ海で中国が実効支配している人工島は「公海」ですので、その人工島を基準とした「領海」はそもそも存在しません。ですから、米国の軍艦が人工島の存在を無視して、そのすぐそばを航行しました。
米軍の行動には大義名分がありますので、中国は口惜しい思いをしながら黙って見ているしかありませんでした。日本政府は米国の「航行の自由作戦」を支持しました。
このところの中国船による日本の領海侵入は、それに対する意趣返しだと思います。
しかし、米軍艦が航行した人工島は「公海」であり、中国の軍艦、公船が航行したのは日本の「領海」であるという点で、その意味合いはまったく違います。
ふたつ目の意図は、近い将来、北太平洋の漁場で不法操業を続ける中国漁船を保護するための布石ではないかと思います。
先日の北太平洋漁業委員会で、関係8か国は、今後、漁船の数を増やさないことで合意しました。
しかし、これからこの漁場での漁獲量を増やそうと目論んでいる中国がこの合意を遵守することは考えられず、結局は未登録の不法漁船の数を増やすことになると思います。
当然、水産庁の漁業取締船がそれを摘発しようとしますが、そのときに中国海警局の公船を大量に投入し、漁業取締船の摘発活動に圧力をかけて妨害しながら、不法操業を続ける中国漁船を保護する展開を想定しておくべきだと思います。
中国海警局は、それまで4つの部門の管理下にあった船隊を国家海洋局に集め、習近平政権発足後の2013年に発足した組織です。
尖閣諸島周辺海域での状況を見ると、不法操業を続ける中国漁船と中国海警局の公船の派遣とはセットと考えられます。
中国では、中国海警局が尖閣諸島周辺海域に大量の公船を投入して対日圧力を加えたことが最大の成果のひとつと評価され、称賛されていると言われています。
中国海警局はいま、目に見える成果を欲しがっているところですので、尖閣諸島に続く大きな成果を求めて、北太平洋でも同様に、日本の漁業取締船に圧力を加えることを考えていると思います。
容易に想定できるそのような事態に対して、日本政府、水産庁、海上保安庁がどのように対応するのか、今から検討を進めておかなければいけません。
本来、国会は政策議論をする場だったと思いますが、現実は、野党が与党のあら捜しをして足を引っ張ることしかしていません。
そのようなことをしているうちに、日本の権益を狙って着々と準備を進めている国が存在することを忘れてはいけません。森友学園問題や加計学園問題などで国会が空転している場合ではないと思うのですが、・・・ 。
※添付画像は、2017年7月19日の読売新聞に掲載された「中国公船による領海侵入状況」です。
2017.07.28
