7月の有効求人倍率が1.52倍と、約43年ぶりの高水準を記録しました。しかし、これほど人手不足なのに労働者の給料が一向に増えません。
財務省の統計によると、企業の利益のうち、人件費に回す割合を示す「労働分配率」は低下傾向が続いていて、サラリーマンの給料はここ10年間、まるで伸びていません。
ここで、ある学校の教師と生徒が、添付2つのグラフを見ながら、生徒が質問し、教師がそれに答えている場面を思い浮かべてください。
生徒:あちこちの企業が軒並み過去最高益を記録してるのに、給料が増えないのはなぜですか?
教師:理由には2つあり、ひとつは、景気のいい時にいったん給料を上げてしまうと、景気が悪くなった時に簡単に下げられないからだよ。
生徒:なるほど、日本の会社は基本的に終身雇用だからですね。
教師:うん。そして、もうひとつは、給料のほかに社会保険料もあるからなんだ。企業は健康保険料や厚生年金保険料を労使で折半してるから、給料を増やすとこっちも増えちゃうんだ。
生徒:給料を増やさないで人手不足を解消するにはどうすればいいんですか?
教師:非正規雇用を増やせばいいんだ。非正規の給料は正規の約6割だからね。
生徒:企業の利益がどんどん増え続けているのに、労働分配率が減り続けていますけど、余ったお金はどこにいっちゃってるんですか?
教師:まずは、株主配当としてばら撒く。そして、残ったお金は内部留保として貯め込むんだ。その額、406兆円。平成29年度の一般会計予算は97兆円だから、その4倍にもなるんだ。GDPで比較すると日本はアメリカの3.8分の1だけど、内部留保は日本の方が多いと言われているんだ。
生徒:そんなに内部留保金を貯め込んでどうするのですか?
教師:本来は設備投資に回すんだが、いまのところただ貯金してるだけだよ。世のなかにお金が出回らないので景気もよくならない。
生徒:景気がよくならないと言えば、いつまで経っても消費が拡大しないのは給料が増えないからですね?
教師:その通り。
生徒:企業は従業員の給料を上げることができないんですか?
教師:できるんだけど、しないんだ。
生徒:なぜですか?
教師:トヨタが上げないからなんだ、トヨタが上げなければホンダも上げない、ホンダが上げなければ取引先のサプライヤーが上げるわけがない。
生徒:ということは、トヨタはその気になれば上げられるんですか?
教師:もちろん。トヨタの従業員は7万人、ひとり毎月10,000円ずつベースアップしたとしても年間で84億円、それに対し、株主配当は約6,300億円だから、トヨタは利益を従業員に回さず、株主にばら撒いているということになるね。残りは内部留保で、トヨタの内部留保金は16.8兆円もあるんだ。
生徒:その貯め込み過ぎ企業にはどんな会社があるんですか?
教師:ダントツの1位がトヨタで16.8兆円、2位が三菱UFJで8.6兆円、3位がホンダで6.2兆円、4位がNTTで5.1兆円、5位が三井住友で4.5兆円というところかな。
生徒:じゃ、政府が財界に給料を増やせと圧力を加えればいいんですね?
教師:それができないんだ、財界は自民党に多額の政治資金を貢いでいるし、その中心にはトヨタがいるから、強いことは言えないんだ。
生徒:自民党政府と財界は持ちつ持たれつの関係にあるんですね?
教師:そう。だから政府は財界に対して「従業員の給料を上げてほしいんですけど」と要望を出すだけで、それに対して財界が「じゃ、ちょっとだけね」と小出しに応じているのが現状なんだ。
このようなQ&Aが延々と続きます。
※添付グラフは、2017年9月28日の読売新聞に掲載されていた「内部留保と労働分配率の推移」と「賃金の推移」です。
2017.10.06
