今年4月、佐賀県の吉野ケ里遺跡に行ったときに、吉野ヶ里公園管理センターの職員と雑談する機会がありました。
そのとき、たまたま周りにカラスが何羽かいたためカラスの話になりました。
その職員は、吉野ケ里遺跡に来園した人たちの弁当がカラスの被害に遭うことがたびたびあるため、時々、日本全国を飛び回っている若い女性の鷹匠を呼んで、鷹をカラスの群れの中に放って群れの中の一羽だけを殺すと、しばらくの間はカラスの群れが公園に寄りつかなくなると話していました。
その話を聞いて、条件反射的に、宇都宮でよく見かける黄色のカバーで覆われたゴミ集積場の様子が思い浮かびましたので、その弁当を黄色のカバーで覆ってみては?と話したのに対し、その職員が「そういう話もあるみたいですね」と答えたあたりで雑談が終わりました。
私は、その時点では、カバーは黄色でありさえすればよいものと思っていました。
しかし、少し認識が違っていたようです。
宇都宮大学農学部の杉田昭栄(すぎた・しょうえい)教授は、10年ぐらい前から、しばしば、テレビ、ラジオに出演し、新聞の取材も受けている人で「カラス博士」として知られています。
杉田さんによると、カラスの嗅覚は人間よりも劣っているため、餌を探すときには、嗅覚ではなく視覚で判断しています。
それは、同じ餌を、中身の見える白い半透明の袋と中身の見えない黒い袋に入れて置き、カラスが餌にたどり着くまでの時間にどのような違いがあるのかを実験したところ、中身の見えない黒い袋の場合には7倍の時間がかかったことでも確認できます。
次に、カラス対策には黄色が効果的かどうかという問題です。
これについては、カラスは黄色が見えないわけではなく、黄色が嫌いなわけでもないため、ただの黄色のカバーでゴミを覆っただけでは何の効果もありません。
では、どうすればよいのか?ということになります。
「紫外線」です。
ヒトの目に見えているのは、赤・緑・青という光の3原色しかないのに対し、カラスの目には、
赤・緑・青のほかに紫外線が見えていて、紫外線で餌を認識しています。
ですから、お手軽に紫外線をカットするのであれば、黒いゴミ袋にすればよいのですが、これだと、カラスにも見えませんが、ヒトにも見えません。
そこで、紫外線を通さない特殊な顔料を練り込んだ「半透明」のゴミ袋にすればよいことがわかります。
そうすれば、カラスには中身が見えず、ゴミ収集の作業員には見えることになります。
そのような思考プロセスをたどって、
①紫外線を通さない特殊な顔料を練り込むこと、
②半透明にすること、
という2つの条件を満たすようにメーカーが試作した結果、紫外線カットの顔料がいちばん効果を発揮する色として黄色にたどりついたということです。
それで黄色のゴミ袋が普及するようになりました。
以上のように、紫外線を通さないゴミ袋、つまり、UVカット仕様のゴミ袋でなければ、カラス対策として何の効果もないことになりますが、果たして、本当に、ゴミ収集場の黄色のカバーはすべてUVカット仕様になっているのでしょうか?
2017.08.14